日本顎口腔機能学会雑誌
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歯牙の変位経路の三次元測定法について
三浦 宏之長谷川 成男加藤 均古木 譲益田 高行
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1995 年 2 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

機能時に発揮される咬合力は歯牙, 歯周組織さらには顎骨にまで及び, それぞれの部位にひずみを生ずる.したがって, 機能時の歯牙の動態を明らかにすることは重要であり, Schöhl (1960) , Behrend (1974, 1978) , Siebert (1980) , 加藤 (1981, 1982) , 三浦 (1985) らによって機能時の歯牙の変位経路が測定されてきた.しかしながら, 三次元測定は容易ではなく, いまだその詳細については明らかになっていない.そこで, 機能時の歯牙の変位経路を生理的に近い条件下で測定する目的で三次元微小変位計M-3型を新たに開発した.
トランスデューサにはマグネセンサを使用した.変位計はマグネセンサの検出ヘッド, 永久磁石, 精密ユニバーサル機構, 測定子および定位装置固定板から構成され, 総重量は48.79である.変位計は前歯部唇側に固定されたシーネを介して定位される.シーネは厚さ2mmのアルミ板および即時重合レジンにて作製され瞬間接着剤にて前歯部唇側に固定される.変位計は測定子部以外が全て口腔外に設置されるために生理的な咀嚼運動を妨げることなく, 口腔内環境 (温度, 湿度) の影響を受けることもない.直径0.3mmの測定子先端を被験歯頬側面中央部に即時重合レジンにて固定することにより, 測定子先端の三次元的な動きは精密ユニバーサル機構を介して各検出方向の永久磁石の動きに正確に変換される.
三次元微小変位計M-3型は接触型なので測定圧を避けることができない.この測定圧は歯牙の生理的な変位経路に影響を及ぼすことが考えられるので可及的に小さくしなければならない.本変位計では精密ユニバーサル機構部にピボットを応用することにより, 測定圧を0.4g以下とした.変位計の各検出ヘッドは相互干渉もほとんどなく±200μmの範囲内において±2%以下の精度でリニアな出力を示し, 機能時の歯牙の変位経路の三次元測定が可能となった.

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