新しいタイプのα-adrenergic blocker である塩酸プラゾシンを前立腺閉塞症30例に投与し残尿量, 尿道内圧波形 (UPP), 膀胱内圧測定 (CMG), 尿流曲線 (UFM), 自覚症状, 副作用, 等を投与前後に測定, 判定し排尿障害に対する効果を検討した. 残尿量については74%の症例において投与前の60%以下に減少し全体として統計的に有意に減少した (p<0.005). UPPにおける最大尿道閉鎖圧 (maximum urethral closure pressure) およびlength of continence zone については有意差を認めなかつた. CMGにおいては最大尿意時の膀胱容量 (maximum cystometric capacity) は平均で投与前の約1.3倍となり最大尿意時の膀胱コンプライアンスは有意に増加した. またプラゾシンの投与により unstable bladder が stable bladder に変化したり無抑制収縮波が減少した症例が認められ排尿筋に対するα-adrenergic blocker の作用による効果と思われた. UFMの最大排尿率および平均排尿率は共に有意に増加した. 30例中23例 (77%) に自覚症状の改善が認められ30例中10例 (33%) に起立性低血圧などの副作用を認めた.
以上の成績および著者らの現在までの研究成果を総合して不安定膀胱 (unstable bladder) の病因に関する4つの仮説をたて, 考察を加えた.