日本農村医学会雑誌
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看護研究報告
在宅療養者が終末期・看取り期を迎える場所に対するキーパーソンの思い
訪問看護の役割を考える
有末 裕子里中 きよか小島 奈保野田 朱美松島 由実
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2018 年 66 巻 5 号 p. 589-594

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抄録

 「家族という共同体に囲まれ看取られて死ぬのが多くの日本人の理想だ」といわれているなか,平成26年度,A訪問看護ステーションにおいて自宅で看取りを迎えた療養者は全死亡者の40%であり,終末期は施設・医療機関を選ぶ家族が多くを占めた。そこで,終末期・看取り期を迎える場所に対するキーパーソンの思いを明らかにし,訪問看護の役割について考えることを目的に,キーパーソン40名に対し聞き取り調査を行なった。結果,現在の介護状況について,『負担に感じながら介護をしている』が50%以上と最も多かった。終末期や看取り期は『自宅以外を考えている』が70%であった。理由については,『介護できる者がいない』,『漠然とした不安を抱えている』が多くを占めた。療養者とキーパーソンとの意思との相違については,『同じだと思う』が約50%,『わからない』が25%であった。  キーパーソンは介護を負担に感じていることが多く,訪問看護師は,看護ケアを実践するとともに,精神的な支えになることが大切である。漠然とした不安に対しては,不安を明らかにし,介護や看取りの経験を伝え,具体的に指導することで解決につながるのではないかと考える。また,療養者が最期を迎える場所の選択について,療養者とキーパーソンが思いを伝え合うことや,ケア提供者がその情報を共有することが重要であり,その機会がもてるように働きかけていくことが,訪問看護師の役割であることがわかった。

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© 2017 一般社団法人 日本農村医学会
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