2021 年 57 巻 5 号 p. 251-260
本研究は,盲学校理療科教員からの要望に基づき,あん摩マッサージ指圧師などを志向する中途視覚障害者に対して,広範な硬さの違いを体験してもらうことのできるキットの試作を行い,広範囲の硬さが提示できているか,そして音声と浮き出し文字の硬さ情報伝達手段としての有効性を検証することを目的としている.8つのデバイスから構成される硬さ識別体験キットを試作し,硬さが軟らかいものから硬いものまでを順番に並び替えさせる実験課題を通じて,並び替えの正確さや速さ,音声と浮き出し文字による硬さ確認方法の有効性についてそれぞれ検証を行った.その結果,試作した硬さ識別体験キットでは,ファントムの硬さを正確かつ比較的短時間に識別できることを確認した.また,ファントムの硬さ確認方法として,音声が活用できる可能性が示唆された.一方,今後の課題として,出力させる音声情報の内容や,触対象物の種類について検討が必要である.