2019 年 59 巻 4 号 p. 348-353
目的.長野県の肺がん死亡率は都道府県別で最低とされる.今回,地域がん登録および院内がん登録データを用いて長野県の肺がんの状況について分析し,低死亡率との関連を探る.研究方法.長野県地域がん登録に登録された2013年に新たに肺がんと診断された症例(1,759例)および長野県で院内がん登録データを国立がん研究センターに提出しているがん診療連携拠点病院,地域がん診療病院において2012~2014年に自施設で肺がんの初回治療を実施した症例(3,087例)を対象として分析を行い,全国値と比較した.結果.長野県の肺がん年齢調整罹患率は35.4(10万対)で全国値の41.4(10万対)を下回り,発見時の限局割合は36.2%で全国の32.5%を上回っていた.臨床進行度・病期分布では,地域,院内がん登録ともに,長野県は全国と比較し限局/I期の割合が高く,遠隔転移の割合が若干低いという傾向を示した.長野県の肺がん罹患/死亡比(I/M比)は1.71と全国値の1.54を上回り,全都道府県中2番目に高かった.結論.長野県では低い罹患率,高い早期発見率が,低い肺がん死亡率の要因に寄与していることが示唆された.