本稿では,廃棄物の焼却処理が比較的普及しており,その排熱を地域熱供給に活用している諸外国の制度を整理し,日本への示唆を論考する。諸外国の熱供給にかかわる制度を整理すると,料金規制等,各種経済的インセンティブを活用する手法と,原則市場に任せる手法の 2 つに分けることができる。前者は熱供給が電力等の代替エネルギーに対して相対的に競争力が低い場合に採用されることが多く,このような状況が当てはまる日本にとっても相応しい制度体系であるといえる。また,民生需要を対象とした地域熱供給は北欧等,比較的寒冷な気候の地域で普及しているのが一般的で,日本の場合は一部地域を除いてその普及は難しいと考えられる。一方で,工場等の産業向けの熱供給のポテンシャルは十分にあると考えられる。その上で,廃棄物焼却施設からの排熱利用を普及させるためには,焼却施設を産業集積地区に隣接して立地することなどを促す制度作りが望まれる。