2019 年 8 巻 4 号 p. 169-173
高齢者の歩行速度調整能力を検討するために,歩行速度を「普通歩行」,「やや速歩き」,「最速歩行」の3段階で実施し,主観的判断による速度変化と身体機能,注意機能,認知機能との関係性について検討した。本研究では,歩行速度が「普通歩行」,「やや速歩き」,「最速歩行」の順に変化している者を「調整可能群」,やや速歩きの速度が,普通歩行よりも遅かった者あるいは最速歩行より速かった者を「調整不良群」とした。その結果,「やや速歩き」の速度調整ができない高齢者が127名中50名(39.4%)いた。調整可能群は,調整不良群より,やや速歩きと最速歩行が有意に速い結果を示した。群間比較において、身体機能、注意機能、認知機能には有意な違いを示さなかったことから、調整不良群は、歩行速度を調整する際に、筋力、バランス能力などの機能が十分に活用できていない可能性が示唆された。