日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年医学の展望
米国で推進される「患者中心のメディカルホーム」から我々は何を学ぶか
関口 健二
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2017 年 54 巻 4 号 p. 499-506

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抄録

世界一の超高齢社会が進む我が国において,良質な高齢者ケアシステムの確立は喫緊の課題であるが,我が国ではようやくその枠組み「地域包括ケアシステム」が,厚生労働省より打ち出され,地域の包括的な支援・サービス提供体制の構築が市町村や都道府県を主体として目指されている.よりよい地域包括ケアシステム構築のための模索が続けられているが,米国での新しいヘルスケア提供モデル「患者中心のメディカルホーム(Patient-Centered Medical Home,以降PCMH)」はその構築に大切な示唆を与えるものと期待されている.

病院中心・疾病治療中心の医療需要ばかりが増大し続けてきた日本において,注目されることのなかったプライマリケア制度は,現在世界の多くの国において,持続可能な医療提供体制構築のカギであると認識されており,PCMHは,現存するプライマリケア制度の質向上のためのモデルである.具体的には,プライマリケア医をリーダーとして,多職種スタッフ,そして患者および患者家族とのパートナーシップにより,患者の全体像を包括的に把握して,最適化されたパーソナルケアを提供しようとする取り組みである.

米国においては,それぞれの州でPCMHの構築に向けた取り組みを行っているが,本稿では,ミネソタ州での取り組みを具体的に取り上げ,PCMHの成果や傾向を分析するとともに,それをどのように我が国の「地域包括ケアシステム」に活かすことができるか考察する.

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© 2017 一般社団法人 日本老年医学会
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