2013 年 46 巻 1 号 p. 71-78
症例は83歳の女性で,子宮脱にて膣式子宮全摘の既往がある.発熱にて救急外来を受診した.身体所見上,下腹部に圧痛を伴う腫瘤を触知し,腹部造影CTにて骨盤内に内部に気泡を伴い左卵巣動静脈と連続する囊胞性病変を認めた.注腸造影検査では,直腸から瘻孔を介し囊胞内腔が造影された.瘻孔からバルーンカテーテルを挿入し膿瘍のドレナージを行い,炎症は数日で軽快した.大腸内視鏡下で瘻孔部の粘膜生検を行い卵巣癌と診断した.以上より,左卵巣癌直腸浸潤・卵巣内膿瘍の術前診断にて,入院2週間後に手術を施行した.術中所見は,左卵巣が硬く腫大し直腸前面に浸潤していた.ハルトマン・両側付属器切除術にて腫瘍をen-blocに摘出した.病理組織学的検査所見はendometrioid carcinomaの直腸浸潤・直腸穿通であった.術後14日目,合併症なく補助化学療法目的に婦人科転科した.術後6か月現在,再発なく術後補助化学療法中である.